能面のおはなし
能は仮面劇であるということが一番大きな特徴です。
ここでは「般若(はんにゃ)」という能面を取り上げてみます。般若とは、仏教用語では「智慧」を表し、言い換えると「祈りによって悟りを開く」という意味合いのある言葉です。何かに執心して鬼になっていますが、能の曲の中ではほとんどにおいて改心します。般若という名前がついた由来には、祈られて悟るので般若という名前がついたという説と、般若坊(はんにゃぼう)という人が作ったからだという説があります。この般若という能面が、もう少し古い鬼女の面と違うところは、2つの表情を1つの面の中に取り入れていることです。般若の上の部分は苦しみや悲しみの表情であり、下の部分は怒りの表情なのです。お坊さんや山伏などと争い、祈られて苦しいと下を向きます。そうすると苦しみの部分が表れてきます。しかし逆襲し襲いかかるときには顔を上げて、口を開けた怒りの表情で相手に向かっていきます。そのような演技に合うように作り出された鬼の面が般若なのです。鬼の能面には男も女もありますが、このように角を生やしているのは女性の面です。
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