〜金剛流宗家 金剛永謹による分かりやすい能の入門編〜
能の歴史
能は、謡(うたい)、舞、囃子、能面・装束、全てが融合され成り立っている総合舞台芸術です。古代の芸能である猿楽の流れを汲み、600年余り前の南北朝時代に結崎座の世阿弥が大成したといわれています。
散楽から猿楽の能へ
能は江戸時代まで「猿楽(さるがく)」あるいは「猿楽の能」と呼ばれていました。猿楽という芸は、もとを辿ると散楽(さんがく)という芸に辿り着きます。奈良時代に散楽と雅楽という対の芸が中国から渡ってきました。その後、荘重な舞や音楽を奏でる雅楽は宮中に残り天皇家や貴族の儀式が行われる時に演じられる式楽になりますが、散楽は滑稽な芸や物真似、曲芸、奇術など大衆的なものであったので、神社やお寺の余興として庶民へ広まっていくようになります。その後、平安時代に散楽が猿楽(あるいは申楽)と名前が変わり、「猿楽の能」へと変化していきます。猿楽の能とは、猿楽が演じる芝居、演劇という意味で、それまでの曲芸などから芝居、演劇としての形態を整えていったことがわかります。
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